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ストーリー​

インターネットのサイトに現れた、
「事故物件★一泊二日のどきどきナイト! モニター参加者募集」という、不思議なイベント企画。
あなたは面白半分で応募したところ、見事当選する。

当日、約束の待ち合わせ場所に向かうと、他の参加者や
管理会社の【Y澤不動産】の
スタッフに加え、依頼人だと名乗る女子高校生・棺 玖麗亜(ひつぎ くれあ)もいた。

最近この物件を相続したという玖麗亜は、『泊って下さったみなさんの楽しいSNS発信で、
近隣住民から“お化け屋敷”と言われているこの家の、悪い噂を払拭してほしい』と微笑む。

――その事故物件は、もと児童養護施設として運営されていた一軒家であった。


児童養護施設「慈愛の家」

一般家屋を改築し、多くの孤児、近親者のいない子供を収容出来るようにした歴史のある施設。
11年前、当時2代目の園長となった「マザー・愛子」は、『先代の遺志を引き継ぎ、少しでも多くの不幸な子供たちに笑顔を取り戻したい』と積極的に入所生を募り、ひとつ屋根の下、愛の溢れる“家族”を 作った。

しかしある時、園長が特に可愛がっていた児童が、階段で足を滑らせ、転落死するという痛ましい事件が起こる。それから毎日泣き暮らした愛子は、徐々に精神を病んでゆき、ついには奇行を繰り返すようになる。
――その数年後。マザー・愛子は、猟銃により自殺した。

哀しい事件のあった事故物件は、近年まで無人のまま放置されてみるみる老朽化し、『お化け屋敷』と揶揄されるようになっていた。

周囲の証言では、廃屋に時折、喪服のような黒ずくめの服を着た人物が入り込む
所を目撃されていたり、不気味な人の唸り声が聞こえたり、廃屋のはずなのに大きな足音が聞こえたりするという、奇怪な『いわくつきの事故物件』として、SNSでも注目され始めていた。

 

そして、2021年現在。
静かに拡がりつつある【事故物件ブーム】に乗り、所有者と名乗る者が、Y澤不動産にこの物件を登録する。

――止まっていたこの家の時間が、再び動き出そうとしていた。

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