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STORY

202X年3月。
その日は、いつもと変わらない日常のはずだった。
私は部屋で本を読んでいた。
古本屋で見つけた、背表紙の擦り切れた洋書。
内容はよく分からなかったが、不思議とページをめくる手が止まらなかった。
数日後、東京都内で原因不明の異変が起き始めた。
人々は正気を失い、周囲に襲いかかる。
ニュースではそれを「狂気」「集団錯乱」「新種ウイルス」
と呼んでいた。
首都圏は瞬く間に混乱に陥り、政府は生存者に国内退避命令を
発令する。
私は、清水湾から避難船が出港するという情報を手に入れ、
港へ向かった。
船が港を離れ、
ようやくこの地を離れられる――
誰もが、そう思った、その矢先だった。
警報ベルが鳴り響き、船は緊急停止する。
『船内で感染者を確認――』
放送は途中で途切れ、船内は一瞬でパニックに包まれた。
助けは来ない。逃げ場もない。
船は、
海の上に浮かぶ逃げ場のない隔離空間へと変わっていた。
私は、この船の中で
生き延びることができるのだろうか――。
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